2020/10/15 23:10
この季節は山が人で賑やかになる。
道には毎日車の列ができるほどのキノコシーズン。
下山途中の人びとから耳にする
「わがんね~」
「あだりよ~」
キノコ採りは楽しいと、今年やっと気がついた。
これは最高だと感心しながら木の枝をキっていると、オーケーサインの丸い部分ぐらいの大きさの実が、二つくっついている。
緑で柔らかいので一つ口に含んでみると、その甘さに驚く。
もう一つは参考に持ち帰ろうと考えるのと同時に、手がその実を口に放りこんでしまった。
自然のまま、一切手をつけず、こんなに甘い。
あともう一粒、、、は探してもない。
憶測をネットで調べてみると隣村特産の「サルナシ」であると判明。
その実は、木ではなく蔓に成る。
何度もそのへんで見ていた固く扱いづらいあの蔓だった。
おらはその蔓を、木をキったりあるいは生かすためにもう何本かキっていて、あとで何かに使えればいいやと山に投げいた。
その蔓先を辿ってみると萎れたサルナシの実が泥にまみれてぶら下がっている。
それを口にふくみながら心底思う。
「なんてもったいないことをしてしまったのだろう」
深く反省して問いただし、この実を生かしてこその林業なのだと見つめ直す。
すでにキってしまった蔓たちは、何がなんでも生かし尽くそう。
(「かずら橋」っての、あれは画像でみる限りとんでもないしろものかもしれない!)
ある日を境に(本日より)、手慣れたキノコ採りたちはすっぱりと山に来なくなった。
もうすぐそこまで冬が迫っているらしい。
さて冬支度ふゆじたく、と改めて山を散策するとこれまでに切った木や枝や蔓がのんのりと転がっている。
なんとか現金収入は得られるようにとがんばって、その間に放置されたものたち。
一年ぐらいは大丈夫と見て見ぬふりだったけど、これがあともう一年もすればどうなるのだ?
このまま腐ってしまうなら、おらは全体なんのために山の木をキって生きようとしているのだ!
徹底して生かし尽くすしかない、そしてそれがやれるのは今の今しかない、と山に柱を建てはじめる。
建った柱をみて、いつものように「へへへ」とひとり笑う。
去年もまったく同じような時期にまったく同じようなことをやっていたなあ。
だけどこれは、これから先も、確かに未知のこと。
今年の冬は、何をつかむのか。
冬こそものの上手なれ。
山は静かで、今日も星はキレイだよ。

